月に魔法をかけられて
3人から見つめられ、とても断りづらい雰囲気が漂う。
確かに瞳子さんの言う通り、実家に帰ると両親もいるし安心だけれども、きっと昨日の出来事をずっと思い出してしまうはずだ。

両親には心配かけたくないので話したくないし、かと言って休みの間、ひとりで恐怖を抱え込んだまま過ごせるかどうかも不安だ。

瞳子さんの申し出はありがたいけれど……。
でも帰らない理由をお母さんに何て説明しよう……。

「わかりました。だけど瞳子さん、両親には今回のことを内緒にしたいんです。すごく心配すると思うので……。でもそうなると実家に帰らない理由が見当たらなくて。母に電話をしたら理由を聞かれると思うんです……」

瞳子さんの方を向いたまま、眉を寄せて小さく息を吐く。

「そっか。理由ね……。うーん……理由か……」

瞳子さんも腕を組んで首を傾けながら、理由を考えている。すると瞳子さんが「あっ!」と両手を叩いた。

「そうだわ。インフルにかかったことにしましょう。そしたら帰らなくていいでしょ」

「イ、インフルエンザですか?」

「そう。インフル! それなら怪しまれないでしょ。美月ちゃん、ご両親に電話してもらってもいい? それで私にも後から少し変わってもらえると有り難いんだけど……」

「わかりました」

私は鞄からスマホを出すと、名古屋の自宅の電話番号をタップした。
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