月に魔法をかけられて
「もしもし、美月?」
「あっ、お母さん」
自宅の電話はナンバーディスプレイになっているので、私がかけるとすぐにお母さんは受話器越しに私の名前を呼んだ。
「今日は何時頃にこっちに着く予定? 駅までお父さんが迎えに行くよ」
「そ、それがね……。なんか私インフルエンザにかかったみたいで……」
「えっ、インフルエンザ? 美月大丈夫? お母さんが東京に行こうか?」
「あっ、ううん。大丈夫。だから今回帰るのはやめておこうと思って……。新幹線に乗るのもつらいしお母さんたちにうつしたらいけないでしょ……」
「そうだけど。でもひとりで寝てるわけでしょ。お母さんが東京に行ってあげるよ」
「ううん。大丈夫……」
私とお母さんのやりとりを聞きながら、瞳子さんが私の肩をトントンとたたき、『私に代わって』と小さく囁いた。
「あのね、お母さん。実は今会社の上司の方のお家にいてね。そこに泊まらせてもらってるの」
「どういうこと? 会社の上司の方のお家?」
「そう……ちょっと代わるね」
私はそう言って瞳子さんにスマホを渡した。
「もしもし。はじめまして。私、美月さんと一緒にルナ・ボーテで仕事をしております吉川瞳子と申します。いえいえ、とんでもございません。美月さんは本当に責任感のある娘さんで、いつもきちんと仕事をしてくださっているんです。それに誰に対しても細やかな気配りをしてくれて、私たちの方が美月さんに助けていただいているんですよ……。そうなんです。美月さんですが昨日の朝から風邪っぽかったようで、私の主人が医師をしているものですから、風邪薬だけでもと思ってご実家に帰る前に来てもらったんですね。そしたらインフルエンザの陽性反応が出てしまいまして……」
瞳子さんとお母さんの会話を横で聞いていた私は、瞳子さんの演技力にびっくりしていた。本当に女優になれるんじゃないかって思うくらいの演技力で、お母さんは瞳子さんの話をすっかり信じきっているようだ。
瞳子さんって本当にすごい人だわ……。
「あっ、お母さん」
自宅の電話はナンバーディスプレイになっているので、私がかけるとすぐにお母さんは受話器越しに私の名前を呼んだ。
「今日は何時頃にこっちに着く予定? 駅までお父さんが迎えに行くよ」
「そ、それがね……。なんか私インフルエンザにかかったみたいで……」
「えっ、インフルエンザ? 美月大丈夫? お母さんが東京に行こうか?」
「あっ、ううん。大丈夫。だから今回帰るのはやめておこうと思って……。新幹線に乗るのもつらいしお母さんたちにうつしたらいけないでしょ……」
「そうだけど。でもひとりで寝てるわけでしょ。お母さんが東京に行ってあげるよ」
「ううん。大丈夫……」
私とお母さんのやりとりを聞きながら、瞳子さんが私の肩をトントンとたたき、『私に代わって』と小さく囁いた。
「あのね、お母さん。実は今会社の上司の方のお家にいてね。そこに泊まらせてもらってるの」
「どういうこと? 会社の上司の方のお家?」
「そう……ちょっと代わるね」
私はそう言って瞳子さんにスマホを渡した。
「もしもし。はじめまして。私、美月さんと一緒にルナ・ボーテで仕事をしております吉川瞳子と申します。いえいえ、とんでもございません。美月さんは本当に責任感のある娘さんで、いつもきちんと仕事をしてくださっているんです。それに誰に対しても細やかな気配りをしてくれて、私たちの方が美月さんに助けていただいているんですよ……。そうなんです。美月さんですが昨日の朝から風邪っぽかったようで、私の主人が医師をしているものですから、風邪薬だけでもと思ってご実家に帰る前に来てもらったんですね。そしたらインフルエンザの陽性反応が出てしまいまして……」
瞳子さんとお母さんの会話を横で聞いていた私は、瞳子さんの演技力にびっくりしていた。本当に女優になれるんじゃないかって思うくらいの演技力で、お母さんは瞳子さんの話をすっかり信じきっているようだ。
瞳子さんって本当にすごい人だわ……。