月に魔法をかけられて
副社長は私が落ち着くまで抱きしめたあと、ゆっくりと身体を離した。
「美月……これから少しつらいことを聞くけど、いい?」
片手で私の手を握り、もう片方の手で私の頭を撫でながら尋ねる。私が頷くと副社長も頷いて再び私に笑顔を向けた。
「美月を連れ去った男って、どこかで見たことあるヤツだった?」
「いいえ……。初めて見る人でした……」
「どこで連れ去られた?」
「会社を出て駅に向かって歩いていたらお蕎麦屋さんの場所を聞かれて……。そしたら急に車の中に連れ込まれたんです……」
「そうか……。何か覚えていることはある?」
「男の人は2人いて……。途中で電話がかかってきて、その人に指示をされているようでした」
「3人組ということか……。他には?」
「あとは……私の名前を知っていました。山内美月さんですかって聞かれて……。それと……私の写真を撮ろうとしていたみたいです……」
「写真? 美月の写真?」
「はい……」
「じゃあどうしてあんなにブラウスが切り裂かれていたんだ?」
「それは……私のそういう写真を撮ろうと……していたみたい……」
そう口にした瞬間、副社長が再び私を抱きしめた。
「美月……もういいよ。嫌なことを思い出させて悪かったな……。ごめん。ほんとにごめん……」
声を震わせながら私をぎゅっと抱きしめる。
それはまるで私の記憶を消し去ろうとしてくれるようで、副社長の腕の力が緩まることはなかった。
「美月……これから少しつらいことを聞くけど、いい?」
片手で私の手を握り、もう片方の手で私の頭を撫でながら尋ねる。私が頷くと副社長も頷いて再び私に笑顔を向けた。
「美月を連れ去った男って、どこかで見たことあるヤツだった?」
「いいえ……。初めて見る人でした……」
「どこで連れ去られた?」
「会社を出て駅に向かって歩いていたらお蕎麦屋さんの場所を聞かれて……。そしたら急に車の中に連れ込まれたんです……」
「そうか……。何か覚えていることはある?」
「男の人は2人いて……。途中で電話がかかってきて、その人に指示をされているようでした」
「3人組ということか……。他には?」
「あとは……私の名前を知っていました。山内美月さんですかって聞かれて……。それと……私の写真を撮ろうとしていたみたいです……」
「写真? 美月の写真?」
「はい……」
「じゃあどうしてあんなにブラウスが切り裂かれていたんだ?」
「それは……私のそういう写真を撮ろうと……していたみたい……」
そう口にした瞬間、副社長が再び私を抱きしめた。
「美月……もういいよ。嫌なことを思い出させて悪かったな……。ごめん。ほんとにごめん……」
声を震わせながら私をぎゅっと抱きしめる。
それはまるで私の記憶を消し去ろうとしてくれるようで、副社長の腕の力が緩まることはなかった。