月に魔法をかけられて
「何? 買い出し?」

「違うわよ。啓太と楽しそうに遊んでると思ってね」

「楽しそうじゃねぇよ。こいつ、こんなに小さいのにどこからこんなパワーが出てくるんだよ。マジで疲れるわ」

啓太くんが副社長にパンチをしたり、飛び跳ねたり、ぶつかっていったりしながら、きゃっきゃっと笑っている。

「悪いわねぇ。そのうち壮真も父親になったらわかるわよ。今以上に大変ってことがね。啓太で予行演習でもしておきなさい」

瞳子さんが2人のやりとりを見ながら楽しそうに笑う。

「そうだ美月ちゃん。もう少しお酒買ってきてくれるかな? 壮真、美月ちゃんと一緒にお酒買ってきて」

「はぁ? 酒? 酒ならたくさんあるだろ?」

「そうだけど足りなくなったらいけないでしょ。お正月だし、私スパークリングの日本酒が飲みたいな」

「はいはい。休みの間ここで居候させてもらってるから買ってくるよ。美月、行くか?」

副社長が私に声をかける。

「ねえ壮真。ところでいつから美月ちゃんのことを『美月』って呼び捨てにしてるの? そう言えばここに美月ちゃんを連れてきたときも呼び捨てにしてたわよね? 2人付き合ってるの?」

『えっ……?』

私と副社長が一斉に瞳子さんの顔を見る。

瞳子さん、さっき副社長には好きな人がいるって私言いましたよね?
どうしてそうなるんですか──!
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