月に魔法をかけられて
「美月ちゃん、ゴメンね。啓太を預けたら心配とかそういうんじゃなくて、せっかくだから2人で行ってきてもらおうと思ったの。啓太がいたら、この子美月ちゃんにべったりくっついちゃうでしょ。そしたらね………」

苦笑いをしながら副社長に視線を向ける瞳子さん。

そんな瞳子さんの視線を逸らすように、副社長は横を向いて小さな溜息を吐いていた。

「瞳子さん、大丈夫ですよ。啓太くんがくっついていてくれる方が私も危なくなくて安心だし……」

「そ、そうね……。そう取っちゃうかぁ、美月ちゃん……。壮真、これははっきり伝えないと前途多難だわね……。空気の読めない啓太を連れて行って吉と出るか凶と出るか……」

瞳子さんは何やらひとりごとのように呟くと、

「壮真、悪いけど啓太も連れてってくれる? 車は家の車を使って。チャイルドシートがあるから」

鞄の中から車のキーを取り出し、副社長に渡した。

それを聞いた啓太くんは、私の足にしっかりと両手をまわし、ぴったりとくっついている。

「美月ちゃん、啓太をよろしくね。言うこと聞かなかったら怒っていいから。啓太、壮真と美月ちゃんの言うこと聞いて、いい子にしてるのよ。わかった?」

「うん。わかったぁ」

啓太くんが嬉しそうに笑顔を向ける。

そして私たちは瞳子さんの家の車に乗って、ショッピングモールへと出かけた。
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