月に魔法をかけられて
瞳子さんたちが出かけていき、この家の中で副社長と2人きりになる。副社長は相変わらず、携帯の画面をスライドさせながら何かを調べているようだった。

「あっ、あの……壮真さん……。紅茶入れますけど飲まれますか?」

様子を窺うように副社長に視線を向ける。

「ありがと」

副社長は携帯から視線を逸らすことなく、真剣な顔をして画面を見つめている。

何を調べているんだろう……。

私はポットにお水を入れてスイッチを入れると、先ほど瞳子さんから教えてもらった場所から紅茶のティーバッグとマグカップを取り出した。

さすが瞳子さん。
置いてあるのはTWGの紅茶のティーバッグだ。
私はその中からアールグレイのティーバッグを2つ手に取ると、袋から中身を出してマグカップの中に入れた。

タイミングよく、カチッとポットのスイッチが切れる。
マグカップにお湯を注ぐと、紅茶のいい香りが漂ってきた。2つのマグカップを持ってソファーのテーブルへと持って行く。

「壮真さん……どうぞ……」

ぎこちなくカップを目の前に置いて、私は副社長から少し離れて座った。
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