月に魔法をかけられて
「聡さん……色々と調べていただいてありがとうございました。私、犯人が……あの男たちが捕まったのなら、もうそれでいいです。できるだけ早く終わらせてください。ひとつだけお願いを聞いてもらえるなら、犯人に有罪判決が出たらおそらく2人とも刑務所に入りますよね? それで刑を終えて出てくると思うんですけど、その出てくる時期を教えてほしいんです。今回のことで恨まれてまた何かされたら怖いので……」
「わかった。それは判決確定後に申し出れば出所時期を通知してもらえるから大丈夫だよ。そのように手続きしておくよ。それより本当の犯人である武田絵奈の方はいいの? あの女にこんなに酷いことされたんだよ? このネタを週刊誌にリークしたらあの女に制裁は加えられるよ。ただ美月ちゃんのことも報道されてしまうけれど……」
「それはいいです。もうこれで終わったことにします」
「やっぱりそうだよね。制裁は加えたいけどそんなことしたら美月ちゃん、二次被害に合うからな……」
聡さんの言葉に副社長は苦々しい表情で唇を噛んでいた。
「二次被害もありますけど、それよりできるだけこの事件を早く終わらせたいんです。もしこのことが何かの拍子で漏れたりしたら、会社のイメージに傷がつくし、何と言ってもお化粧品に影響が出てしまいそうなので……」
「化粧品に影響?」
「はい。女性ってみんな表には出さないけど、綺麗になりたいし、幸せになりたいんです。心の中ではそう思ってるんです。だから占いとか、縁結びの神社とか、パワーストーンとか、コスメとか幸せになれるものを求めるんです。こんな酷いことをするような人がCMをしている商品ってわかったら、おそらく誰も購入しなくなります。犯罪をした人がつけてる化粧品なんて絶対に嫌だから。自分まで不幸になっちゃいそうだから……。なので悔しいですけど、腹も立ちますけど、私、絵奈さんが犯人だったってことは漏らしたくないんです……」
「美月……」
「美月ちゃん……」
副社長と聡さんが同時に名前を呼んだ。
「確かにそうだよな。企業イメージに傷がつくし、何よりこれが報道されればルナ・ボーテの株価も下がるだろうしな。ルナ・ボーテが被害者とは言え、失うものは大きいよな……」
聡さんがぼそりと呟く。
その瞬間、副社長が凄まじい視線とともに怒りをぶちまけた。
「聡、お前、納得すんなよ! 会社のことはイメージに傷がつこうが株価が下がろうが、俺がこれからどうにかするよ! それよりあの女だけ何も裁かれないなんて、それじゃあ泣き寝入りじゃねえか!」
「壮真、お前の気持ちはよくわかる。俺だってどうにかしてやりたいよ。だけど企業イメージに傷がついたら、そのイメージを取り戻すまで大変なのはお前が一番よくわかっているだろ? それに株価が下がって経営が悪化したら、社員を守れなくどころか会社の存続も難しくなるぞ。俺もそこまで考えなかったが美月ちゃんの言う通りだ。もう少し冷静になれよ」
聡さんが苦しそうに瞳を揺らした。
「わかった。それは判決確定後に申し出れば出所時期を通知してもらえるから大丈夫だよ。そのように手続きしておくよ。それより本当の犯人である武田絵奈の方はいいの? あの女にこんなに酷いことされたんだよ? このネタを週刊誌にリークしたらあの女に制裁は加えられるよ。ただ美月ちゃんのことも報道されてしまうけれど……」
「それはいいです。もうこれで終わったことにします」
「やっぱりそうだよね。制裁は加えたいけどそんなことしたら美月ちゃん、二次被害に合うからな……」
聡さんの言葉に副社長は苦々しい表情で唇を噛んでいた。
「二次被害もありますけど、それよりできるだけこの事件を早く終わらせたいんです。もしこのことが何かの拍子で漏れたりしたら、会社のイメージに傷がつくし、何と言ってもお化粧品に影響が出てしまいそうなので……」
「化粧品に影響?」
「はい。女性ってみんな表には出さないけど、綺麗になりたいし、幸せになりたいんです。心の中ではそう思ってるんです。だから占いとか、縁結びの神社とか、パワーストーンとか、コスメとか幸せになれるものを求めるんです。こんな酷いことをするような人がCMをしている商品ってわかったら、おそらく誰も購入しなくなります。犯罪をした人がつけてる化粧品なんて絶対に嫌だから。自分まで不幸になっちゃいそうだから……。なので悔しいですけど、腹も立ちますけど、私、絵奈さんが犯人だったってことは漏らしたくないんです……」
「美月……」
「美月ちゃん……」
副社長と聡さんが同時に名前を呼んだ。
「確かにそうだよな。企業イメージに傷がつくし、何よりこれが報道されればルナ・ボーテの株価も下がるだろうしな。ルナ・ボーテが被害者とは言え、失うものは大きいよな……」
聡さんがぼそりと呟く。
その瞬間、副社長が凄まじい視線とともに怒りをぶちまけた。
「聡、お前、納得すんなよ! 会社のことはイメージに傷がつこうが株価が下がろうが、俺がこれからどうにかするよ! それよりあの女だけ何も裁かれないなんて、それじゃあ泣き寝入りじゃねえか!」
「壮真、お前の気持ちはよくわかる。俺だってどうにかしてやりたいよ。だけど企業イメージに傷がついたら、そのイメージを取り戻すまで大変なのはお前が一番よくわかっているだろ? それに株価が下がって経営が悪化したら、社員を守れなくどころか会社の存続も難しくなるぞ。俺もそこまで考えなかったが美月ちゃんの言う通りだ。もう少し冷静になれよ」
聡さんが苦しそうに瞳を揺らした。