月に魔法をかけられて
ぽとりぽとりと落ちていく涙が、パジャマにすこしずつ染みを作っていく。

すると副社長の手がそっと私の頬に触れた。

零れる涙を親指で優しく拭う。

「美月……、辛いのにごめんな。本当にごめんな……。俺が諦めやすいように、俺を傷つけないようにそんな風に言ってくれて……。ほんと、美月の名前、ルナ・ボーテだよな。会社のこと大切に思ってくれて、ほんとにありがとな………」

副社長は私を抱き寄せると、すっぽりと包みこむように抱き締め、その腕にギュッと力を籠めた。

「美月……、これから俺が美月をずっと、一生、永遠に守るからな……」

耳元で囁かれる愛が溢れる言葉に、私も副社長の気持ちが少しでも軽くなるようにと願いながら、背中にそっと腕をまわした。



しばらくして、副社長がゆっくりと身体を離すと、いつもの柔らかい瞳で私を見つめた。

何度も私の髪の毛に優しく触れながら、瞳を揺らす。


「なあ美月……、美月を俺のものにしてもいい?」


緊張を含んだような掠れた声。

ゆらゆらと揺れる瞳。

その奥から、真剣な気持ちが伝わってくる。


俺のものっていうことは、きっとそういうことだよね……?

キス以上ってことだよね……?


緊張と不安が押し寄せてくる中、私は副社長の瞳を見つめると、小さく頷いた。
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