月に魔法をかけられて
2人の話の中に自分も加わりたい衝動に駆られながらも、今の業務は秘書だという立場を考え、私は会議室を後にした。

だけど、自分の席に戻ってきてからも新ブランド立ち上げのことが頭から離れず、ここでプランを考えてもどうにもならないことがわかってもいても、あれこれと考えてしまう自分がいた。


何を限定品にすれば売れるのだろうか? 
どういう化粧品なら顧客の心に響いてくれるのだろうか?


ルナ・ボーテの化粧品ラインをひとつひとつ確認しながら、自分なりに考えていく。

先ほどの2人の話だと新ブランドは、肌の輝き、艶、保湿を重視したひとりひとりの美しさを満たすエレガントな化粧品だと言っていた。

ということは、化粧水や乳液を限定品にしたとしてもインパクトには欠ける。

かと言って、アイシャドウだと、この間の新色コスメとほとんど変わらなくて一緒になってしまう。

グロスも絶対にこの限定品がほしい……とは思わないだろうし、リップは個人によって色の好き嫌いが出てしまう。


いったい何がいいんだろう……?
ファンデーションも限定品としての力が弱いし……。


美容液の限定品?

美容液なら一年中どの年齢層の女性も手放せないはずだ。

肌の輝き、艶、潤いも重視されているし、今回のコンセプトにも合っている。


だけど……。
何かもうひとつ、『これ!』というインパクトがほしい。

特別感があって、肌の輝きも艶も潤いもあるもの……。

うーん……。
香水みたいなエレガントで持っているとテンションがあがるような特別感……。


あっ!
フェイスパウダーはどうだろう?

フェイスパウダーなら、輝くような品のある艶感も保湿成分もある。

それに、微細な粒子が透明感まで出してくれて、コンセプトにある美しさを満たしてくれる。

ケースもファンデーションと違って可愛いケースが作れるはずだ。


これ、いいかも!


自然と顔が綻んでくる。

思いついたことに満足したのも束の間、私が考えるようなことは既に塩野部長も瞳子さんも考えているはずだと予測して、私はがっくりと肩を落とした。
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