月に魔法をかけられて
私にできることって何もないのかな?
落胆する中、ふと先ほどの塩野部長の言葉を思い出した。

『山内さんは今まで通りしっかりと副社長のサポートをしてあげて。表面的には変わらなくても、精神的にはつらいことも多いだろうから。男は特に大切な女性の前だと弱い姿は見せたくないものだからね』


そうだよね。
私にそんな姿を見せてないだけで、きっと心の中はつらいはずだよね。

ごめんね、壮真さん……。
毎日こんなに近くにいたのにつらい気持ちに気づいてあげれなくて……。
私は今までたくさん助けてもらったのに……。


そう考えるとすぐに涙が浮かんでこぼれ始める。

どうして私はすぐ泣いてしまうんだろう。
こんなときに私まで心配かけたら、壮真さんにもっと負担をかけてしまう。
もっと強くならないと!

私が一番に壮真さんのことを信じてあげなきゃ!
そうだよ。
何があっても壮真さんを信じて笑顔でいよう。
少しでも壮真さんの心と身体が楽になるように──。

そう決心した私は、壮真さんが話してくれるまでは知らないふりをしていつも通り振る舞うことにした。
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