月に魔法をかけられて
「なんかまだ他に何かある顔してるけど、異動したくない理由があるのかな? もしかして美月ちゃん結婚するとか?」

瞳子さんは私の顔を覗き込むように尋ねてきた。
こういう表情を読み取るところはさすが瞳子さんだ。

「結婚はしません」

私は視線を落とし首を振って小さな声で答えた。

「この際だから何でも話してくれていいのよ。美月ちゃんが話したことは誰にも口外しないから」

瞳子さんにそう言われ、私は話していいものかどうか迷っていた。

こんなことを瞳子さんに言ってもいいのかな。

「私はね、自信を持って美月ちゃんを推薦したの。美月ちゃんの仕事ぶりは私が保証できるから。美月ちゃんにとってはステップアップのチャンスだからいいと思うんだけどな」

おそらく瞳子さんは私が不安で仕方がないからこの異動を嫌がっていると思ってる。
それもあるけど、私は過去のある出来事が原因で、あまり男性の近くで働きたくないのだ。

瞳子さんの『美月ちゃんなら大丈夫』といった瞳で見つめられ、私は意を決して過去の出来事を話し始めた。
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