月に魔法をかけられて
それは私が小学校3年生のとき、学校から一緒に帰っていた友達と別れ、家まであと数十メートルの距離での出来事だった。突然後ろから走ってきた男の人が私のスカートの中に手を入れてお尻を触ってきたのだ。突然のことで、最初何が起こったのかわからなかった。

ランニング姿の男性が私の横を通り過ぎ、そして振り返る。ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら──。

こっ、怖い……。

とっさに恐怖が襲ってきた。

私は今この男の人にお尻を触られたんだ……。
この男の人に何かされる……。

そう感じた私は全速力で走りだした。
当時私が住んでいたのはマンションの8階。
マンションに着いたところでオートロックの鍵を開けないといけない。鍵を開けている間にあの男の人につかまってしまう。

どうしよう……。

小さな頭の中で私は一生懸命逃げる方法を考えた。
お母さんを呼びたいけど、連絡することもできない。

怖い、怖いよう……。

私はマンションの地下の駐車場へと逃げ込んだ。
そして見つからないように隅っこの車の陰に隠れたのだった。
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