初恋前夜
 つまり、一年生の採用作品よりも、僕のホンのほうがよかった、面白かったという審査員がいるという点だ。
 たった五名の主観に委ねれば、審査する人間の趣味嗜好や境遇によって結果が左右されることもあるだろう。今回の五名では四対一だったものが、広く社会に問えばひょっとしたら逆転しているかもしれない。テレビの視聴率は六百世帯のサンプルでも正確な数値は出せないと言われているくらいだ。五人じゃお話にならない。

 …………。

 ここまで考えて、自己嫌悪に陥る。
 楓が言った通り、病みまくってる……。出た結果を受け止めずに、僕はどれだけ毒を吐いてるんだ。
 部内のみんなだって、一年生の初出品作と僕の三度目の応募作でどんな違いがあったのか、興味はあるだろう。でも、思っていながらあえて口にしないのかもしれない。それだけひとのことを思いやることができる人間力の高いメンバーなんだ。
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