そろそろきみは、蹴られてくれ。


「ね、いっておいで」


微笑まれて、うなずく。


「ありがとう、花乃……!」


声が震えていて、ほんとう、これじゃあダメだと思った。


かもしれない、つい十数分前のわたしなら。


大丈夫、紗奈。


花乃がいてくれるから。


わたしがすきになったひとは、橘なのだから。


「えっと、どうしたらいいんだろう……。部活が終わるまで、待っていてもいいのかな」

「今日、部活あるのかな?」

「……え?」

「だって、いつもはすぐ部活に行っちゃうのに、今日はゆっくりだったよね?」


──目が合った。気がした。ああ、ほんとうだ。

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