そろそろきみは、蹴られてくれ。


「花乃、だいすき……っ!」


ぜったいに見つけられる。


なぜだかわからないけど、自信があるの。


「わたしも、紗奈ちゃんだいすきだよ!」


送り出してもらって、階段を駆け下りる。


走ってごめんなさい。


お願い、今日だけ。


ひとどおりのある廊下に出て、早歩きで進む。


わたし、橘のことを見つけるの、得意なんだよ。


鼻を啜って、涙を薙ぎ払って、息を吸う。


見つけた。




──わたしの、すきなひと。



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