赤鬼と黒い蝶
 灯籠の灯りがゆらゆらと揺れる。

 切なくて……。
 苦しくて……。

 あなたとひとつになれることが嬉しくて……。

 あたしは泣きながら、信長に抱かれた。

 出来ることなら、ずっとこのまま……。
 あなたの腕の中で、抱かれていたかった。

 ――どうか……。

 美濃も光秀殿と逢えますように。

 ――どうか……。

 目眩(めくるめ)く快楽の渦の中で、信長の優しい瞳が涙できらきらと光って見えた。

「紅とは偽りの名であろう。そなたの本当の名は何と申す。教えてはくれぬか」

「……紗紅でございます」

「さく……よい名じゃ。一度しか言わぬ。よく聞くがよい。さくよ、わしと生涯添い遂げよ」

「……は……い」

 零れ落ちる涙に、信長はキスをした。
 何度も、何度も、キスをした。

「一生……あなたのお側において下さい」

 あたしは信長と永遠の愛を誓った。

 この日ほど、夜が長く感じられたことはなかった。
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