月が綺麗ですね、の国に恋したの♡
駅前の居酒屋で2人で飲んだ。

刺身に、串焼き盛り合わせに、肉じゃがに、いももちに、シーザーサラダ。生中を2杯ずつ。結構、飲み食いした。

「森谷ぁ~。俺は、お前に期待してるんだからな!!」

ばん、ばん、ばん、強く俺の背中を叩いた部長。

酒に弱い性質(たち)の部長は、すっかり出来上がっていた。俺は、といえば、まだ全くのしらふだ。俺は、部長が心配になってきた。

「部長、ちゃんと帰れます?送りましょうか?」

「お前、逆方向だろ?タクシーに乗っちまえば大丈夫。お疲れさん」

俺は、タクシーを拾い、社長の自宅の住所を告げた。部長を載せたタクシーが走り去っていく。

まだ、電車がある時間だったので、俺は下北沢の自宅まで電車で帰った。

風呂に入って考えた。本当は部長が行きたかったんだろうな。LAの大学を卒業した部長だ、懐かしくないはずはない。それを、俺に譲ってくれたんだ。部長の期待に応えられるよう、がんばらなきゃな。

そうだ、と思いついて、親友の純一に電話をかけることにした。純一と、純一の奥さんの美沙は,俺の大学時代の同級生だ。あんなに気性のきつい美沙のどこがいいのか、俺には理解しかねるが、「可愛いところもあるんだぜ」と純一はよく惚気てきていた。喧嘩の多いカップルで、くっついたり、離れたり、しながら結局一昨年結婚した。結婚してからは、概ねうまく行っているようだ。純一の広い心のなせる業だと思うが。

「もしもし、純?」

「おぉ、悠翔。東京に行ってから、どうだ?うまく行ってるか?」

「実は、1週間後から、ロスに半年くらい行って来る。電話は、当分できなくなるな。そっちはどうだ?カフェ、うまく行ってるか?」

「すごいな!ロスか!お前、半年間交換留学してたもんな、英語は問題ないよな。うちは、う~ん、なかなか、難しいな」

「そっか。おいしいのにな、純の料理」

「料理がうまいだけじゃ、客は来ないさ」

「そういうもん?」

「もん、もん。それにしても、ロスか。東京でも遠いと思ってたのに、ロスか」

「まぁ、半年後には帰ってきて、また、こっちで半年働いて。で、また、ロスかな」

「住むところとか、どうすんの?」

「こっちは、社宅だから問題ないんだけど、向こうでは、ホテル長期滞在になるかな」

「すっげ、金かかりそ」

「会社持ちだからなぁ」

「エリートはいいなぁ。優遇されてて」

俺としては、純一の生活のほうが、憧れだった。妻と2人とカフェ経営なんて、優雅じゃないか。

「俺なんて、働きバチだよ。なんかあったら、すぐ切られるぜ」

「悠翔なら、そんなことないって。将来有望、なんだから。ロスでもがんばれよ」

「サンキュ。美沙さんと仲良くな」

「ありがとう。元気で。帰って来たら、連絡くれよな」

「もちろん。じゃ」

電話を切って、美沙と話さなかったことに気づいた。まぁ、いっか。
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