どうして・・

···心からありがとうございます。


「私も、そう思った事があります。
実は····
私の父は、誰からも尊敬される
検事でした。
そんな父が私を庇って
亡くなったのです。
私は、大好きな父を失ったときに
恋人だと思っていた
いや、名ばかりの恋人でしたが
その人の言葉にうちひしがれ
海に身を投げてしまったのです。

これは····その時の名残りです。

そんな私に、前夫の旭は献身的に
尽くしてくれました。
こんな身体の私を好きだと
言ってくれる奇特な人は
二度と現れないと思い結婚したのです。

ですが、私は妊娠しにくい身体で
あちらのお義母さんに
子供が出来ない事を言われ続け
旭に浮気をされました。

それも二年も知らなかった。
ううん、きっと知っていて
知らないふりをしていたと思います。

でも、その彼女さんが凄く良い人でね
離婚をして良かったと。

で、色々あって·····てっちゃんに
もらってもらったの。

私も····ずっと····私自身をせめてきました。

こんな私ですが、言える事は
きっと、きっと
彩羽さんだけを理解して
彩羽さんに寄り添って
くれる人が現れます。

きっと。
だからそんな風に言わないで。」
と、言う一華さんを抱き締める
奥菜先生。

一華さんのお兄さんである
佐野先生が
「怜は、父に憧れていて
怜にとって絶対的な人だったんだ。
だけど、それでも一華に酷い事を
言って良いとはならない。」
と、苦しそうに話す。

きっと佐野先生にとって
怜さんは大切な人と言うのがわかった。

大事な妹さんと大切な友
佐野先生も辛かったろう。
「一華が姿を消したときも
なんで自分が寝てしまったのかと
自分を呪ったよ。
やっと見つかった一華は、
ボロボロでね。
意識も戻らなくて
母も俺も心配した。

旭も一華の友人のゆかりちゃん
この子も弁護士なんだけど。

ずっと心配して探してくれたり
一華に寄り添ってくれていたんだ。
だが、旭と結婚して
幸せだったのは、少しの間。

旭なら、と思っていたのに
また、一華を傷つけて。」
と、佐野先生が言うと
「いいんだよ。
俺がいるのだから
俺が、あの時、旭なんかに
一華を讓らなかったら
一華は早くから幸せいっぱい
だったんだ。
あのやろう、また、怒りがわいてきた
怜のやろうも。」
と、言う奥菜先生。

本当に一華さんを愛しているのが
わかる。
「こんなポンコツの私を
てっちゃんは、大切に大事に
してくれるのです。」
「ばかっ、ポンコツいうな。」
と、奥菜先生。
「一華は、海であちこちを
ぶつけ、漁師の網に
ひっかかっていたのを見つけられたんだ。

脾臓は裂け、頭も縫合し
お腹と背中には
流れていた木がぶつかったのか
肉が盛り上がっていて
足は網に巻き付き、凍傷もあり
壊死していて切断して指がない箇所が
あるんだ。」
と、言われて一華さんを見ると
「息子を抱き締める事も
できない、情けない母親なの。」
と、言う一華さんに
首をなんどもふりながら
そんな事ないと言いたかった。

「だからって、言うわけじゃないが
あなたも負けないで。
あなたは、とても真面目で
心優しい人だとわかります。
だから、負けないで。」
と、言ってもらえて
なんども、頷いた。

佐野先生を見ながら
一華さんを見て、奥菜先生を見て
きっと、私の為に
辛い過去を話してくれたのだ。

私は涙を拭きながら
「ありがとうございます。
私は、自分の好きな仕事を
頑張って生きて行きます。
一華さん、奥菜先生
佐野先生、
私の為に、本当にありがとうございます。
奥菜先生みたいな方が
私の前に現れる事が
ありましたら、もう一度だけ
信じる事が出来るかもしれないと
思えるようになりました。」
と、頭を下げて顔をあげると
三人とも優しい顔をしていた。

父と母は、涙を拭きながら
頷いてくれた。

私は、川本のご両親も
新も美春も幸せになって
欲しいと思えるように
なっていた。

奥菜先生は、この案件の為に
色々と段取りをしていた
と聞かされた。

美春の旦那様である池谷さんにも
彩羽の事は、簡単に話していたらしい。
池谷さんは、だから、あ~言って
くれたんだ。

検事の一華さんや旭さん
佐野先生
大賀先生······と。

こんなにして貰えて
感謝しか·····なかった·····。
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