どうして・・

···今回は偶然


律は、彩羽を抱き抱えて
ベンチに座る。

佑も、心配そうに寄り添っていた。

山寺の両親も
日垣の両親も心配そうにしている。
一華さんも辛そうな顔をして
彩羽を見ていたが·····

先生は、
「川本さんは、奥さんの友人が
出産をしてお祝いにこられたのです。
それが、たまたまこの病院で
会うことはないと思っていたのですが。
ご報告していなくて
申し訳ありません。」
両親と律に説明してくれた。

きっと、気になってきて
くれたのだろう。
忙しいのに····
奥様も····
と、律が考えていると

先生は、二人に向かい
「川本さん、服部さんも
気持ちは、わからなくはありません。
ですが、何年経っても
もう、大丈夫なんだ
と、言う事はないのです。

あなた方にも辛く長い年月を
贖罪の日々と心からお詫びをしたい
と、思われて生きてきたと
思います。

ですが、彩羽さんにとっては
簡単に受け入れる事は難しいと
思います。

彼女は、過去に戻りたくない
前だけを見て生きて行きたいと
言われていました。

まだ、ダメなのか?
と、思われるでしょうが
やる側・言う側は、
やれば・言えば終わりです。
だが、受ける側は心に傷となり
残り続けます。

彩羽さんは、
山寺さんと結婚されましたが
そこに行き着くまでも
簡単ではありませんでした。

結婚・式・ドレスのワードには
対応が難しく
式は、ごく簡単に行ったと
話をききましたが······

ドレスを選びに行く事もできず
選ぶにも何時間もかかり

当日も、数分の式に
何時間もかかりドレスを着用したと。
何度も吐き気と戦い
幾度も意識が失くなりそうになる
彼女に、夫である律君は、
もうドレスを着なくて良いと
思ったそうです。
ですが、彩羽さんは諦めることなく
律君は、ずっと彼女を抱き締めながら
ドレスの着用をスタッフの方と
一緒にやったそうです。

結婚式・ウェディングドレスは、
女性にとって、とても大切で
とても意義のあるものです。

彩羽さんの受けたものは
それだけ重いのだと
私は思います。

今回は、たまたま
本当に偶然ここ日本で
あったのだと思いますが
彩羽さん家族は、日本には
いませんので、
二度会うことのないように願います。」
と、話した。
「今回は、法的処置はとりません。
意図的ではないようですので。
お二人とも、バカな事はしないと
思いますが、意図的に接触を
行うような時は、私が率先して
動きますので、頭の片隅に置いていて
ください。
それでは、お引き取りを」
と、一華さんの凛とした通る声が
響いた。

美春は、とても辛そうな顔をしていた。

新は、歯を食いしばり下を向き
新の妻・麻美は悲しそうな顔をしていた。

三人は、立ち止まったまま
美春の店のママも
近くで様子をみていた。

美春は、ママの旦那さんが病気をして
お見舞いに来た帰りだったらしい。
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