ニセモノの白い椿【完結】
もうそろそろ、限界なのかもしれない――。
ただ好きな気持ちだけで、近くで過ごせれば、それでいいと思っていた。
でも、人間の心は、そんな風に都合よくできていないらしい。
「――最近、生田さん、溜息多くないですか?」
「え? あ、ああ、そう?」
勤務後のロッカールームで隣にいた白石さんが話し掛けて来た。
「自覚ないんですか? 呼吸をするように溜息ついてますよ」
「え? そんなに?」
無自覚って、怖い。
「溜息ついてると幸せ逃げますよ。じゃあ、お先です。私は、これから合コンなんで!」
溜息まみれの私と違って、頭のてっぺんからつま先まで、きらっきらの輝く女子に変身していた。
颯爽と出て行くその背中を見送る。
いつの間に着替え終わっていたのか。
気持ちの切り替えが早いって、凄い特技だ。
同じ頃に着替え始めたのに、私なんてまだ制服を着た状態だった。
着替えも気持ちも、まったくうまく切り替えられない。
特に早く帰る理由もないし。
この日の朝、起きた時には木村は既に出勤した後で、ダイニングテーブルにメモがあった。
”昨日は、本当にごめん。反省してます”
何が、『反省してます』だ。
思い出してはまた息を吐く。
着替えを済ませ、職場を出る。
これからまた、長い夜が始まる。
「椿さん」
重い足取りで歩き出すと、聞き覚えのある声が耳に届いた。
その声に振り返り、またも大きな溜息が出た。
ここは待ち伏せのメッカか――!
どうして、誰も彼もがここで待ち伏せをしているのか。
そこには、強張った表情をした巨乳女――元夫の新しい女がいた。