ニセモノの白い椿【完結】
「なんで、そうなる」
「――おまえ、来ている見合い話を断ったらしいな。それで、親父さんが激怒していると聞いたぞ」
見合いを、断った――?
”今、見合いしているわけでもない。これから先、いつかの話だ。何も気にしないでいいんだよ”
この前、それとなく木村に聞いてみたとき、そう木村は否定していた。
「なんでそんなことまで知ってんだ?」
舌打ちと共に、苛立ちの滲んだ声に変わる。
「華織さんに聞いた」
「姉貴も、余計なことを……」
「彼女のこと以外に、おまえが見合いを断る理由を見つけられなかった」
「別に、深い意味なんてない。今は、まだ結婚したくなかった。ただそれだけだ――」
「そんな嘘が、通用すると思ってんのか?」
鋭い榊さんの声が、一蹴した。
「おまえは、昔から、見合い結婚をするということを覚悟していた。そして、それを受け入れてもいた。だから、特定の女も作って来なかったんだろう? 学生の頃から、おまえは徹底していたよ。それは全部、来るべき時のためだ。そうやって生きて来たくせに、なぜここに来て断る?」
榊さんが捲し立てた。
「彼女に惚れたからじゃないのか? 友人だとか言いながら、本当は違った。だから、見合いなんて受けられなかった。そうなんだろ?」
「黙れ!」
感情的で、それでいて悲痛なその叫びが、胸に突き刺さる。
それでも榊さんはやめなかった。
「おまえらしからぬ、感情的な否定の仕方だな。図星か? ずっと諦め達観して、そういうもんだと言い聞かせて。でも、初めて、自分を制御できなくなった。それくらい、惚れてるってことだろ!」
迫り来るような厳しい口調に、こちらにまで緊迫感が伝わる。
「……そうだよ」
ぴんと張り詰めて痛いほどの私の胸に、その絞り出したような声がぽつんと落ちた。
今、なんて言った――?
「どうにもできないほど、惚れてるよ……!」
それが波紋のように広がって、私を混乱させる。