ニセモノの白い椿【完結】
「陽太は、初めての結婚なのよ? うちの大切な一人息子で、そんな、そんなの……」
激しく動揺しているのか、言葉がところどころで、途切れる。
「俺の大切な人を”そんな人”呼ばわりされる覚えはない。離婚したことに、彼女に落ち度はない。むしろ、そのことで傷を深く負った。そんな彼女を俺は大事にしたいと思った。二人で幸せになりたいと心底思う。彼女となら、この先どんなことも一緒に乗り越えて行ける。結婚って、そういう気持ちが一番大切なんじゃないかな。だって、家族を作って行くということだろう?」
母親は項垂れ、父親は膝の上で骨が浮き出るほどに手を握りしめている。
「――でも。お父さんと母さんが、すぐに受け入れてくれるとも思っていない。これから時間をかけて、分かってもらえるよう俺も努力するつもりだよ」
結局、変な小細工をしたりせず誠心誠意、自分の気持ちを伝え続けるしかないと思っている。逃げも隠れもしない、いつだって真正面から向きあうつもりだ。
両親と喧嘩するつもりはない。椿のことを、心から受け入れてほしいとそう思う。
それに時間がかかることも分かっている。だから、早い段階でこうして両親に告げたのだ。
「ただ、俺の気持ちは決まっている。彼女以外の人と結婚するつもりはない。心から愛しているんだ。その俺の覚悟だけは知っておいてほしい」
「その人の、名は? 仕事は? 今、何をしている」
押し黙っていた父親が、その口を開いた。
「それはまだ言わないでおく。俺がもっとお父さんと母さんを説得出来てから。二人の気持ちが少しでも変わってくれたら、その時は彼女を紹介したい。それまでは、会わせるわけにはいかない」
この状態で椿のことを教えたりしたら――。
父親と母親が何をするか分からない。自分の親だから、そこまで疑いたくはないが、勝手に椿に会いに行くとも限らない。
それに、今の時点で椿を紹介しても、その偏見に満ちた目で椿を見て、彼女を傷付けることになるのは火を見るより明らかだ。
両親を説得するのは俺の役目であり、男としての責任だと思っている。
「俺は、あなたたちの息子だよ。俺が選んだ人を、信じてほしいと思う」
そう告げて、俺は立ち上がった。
「また、来るよ」
鞄を手にして、居間を出た。
リビングの扉を閉めたと同時に、大きく溜息を吐く。