ニセモノの白い椿【完結】
「――どんな人なんだ」
父親が鋭い眼差しのまま、俺を見据えて問い掛けて来た。
「どういう人なのか言ってみなさい」
咄嗟に”離婚”の二文字が浮かぶ。
でも、俺に迷いはなかった。
こういうことは、最初に説明しておいた方がいい。
それに、椿が結婚して離婚したこと――それもひっくるめて今の椿なのだ。
その事実を隠すということは、椿という人間を否定することになる。
俺は、彼女のすべてを愛している。
「とても素敵な人だよ。一緒にいると安らげる。離婚した過去があるけど、その傷を乗り越えようと頑張って来た。年は俺より二歳年上で、料理がとても上手なんだ。相手を思いやれる優しい人。俺が初めて、心から守ってあげたいと思った人だ」
それら全部が、彼女を構成している。
「待ちなさい」
俺の声を遮るように、父親が言葉を挟み込んで来た。
「今、何と言った?」
静かにそう問いかけて来る。その声が、異様に静かなだけに余計に威圧感を放っていた。
「離婚歴がある、ということについてですか?」
俺は顔色一つ変えずに、淡々とそう聞き返す。
「おまえ、離婚って……。見合いを断ってまで、どうして、わざわざそんな人を――」
父親は絶句した。
「そうよ、陽太。女性ならたくさんいるでしょう? あなたなら、いくらでもいい人と結婚できる……っ」
母親までも口元に手を当てて、嘆き始める。
この反応は最初から分かっていた。
自分の親なのだ。性格も性質も熟知している。
揃いも揃って、時代錯誤も甚だしい岩のように硬い思考をしている。
だからこそ、最初、俺は椿のことを自分のものにしようとしなかったのだ。
こうなることが目に見えていたからだ。
でも、もう、俺の心は決まってしまっている。