ニセモノの白い椿【完結】
「いえ。私、陽ちゃんの婚約者なので。あなたに会う権利はあると思います」
婚約者――。それは、一体。どういうこと――?
「私と陽ちゃんはこれまでずっと幼馴染という関係でしたけど、でも、その分気心も知れているんです。私の父も、陽ちゃんのお父様と親しいですし。幸い私もまだ独り身なので、私と陽ちゃんが一緒になるのが一番いいだろうということになったんです」
木村が見合いを断り、結婚相手は自分で決めると言ったから、木村の父親は急遽、木村の幼馴染である彼女を婚約者に見立てたということか――?
それは、つまり、木村の父親は本気だということだ。
本気で、木村の意思を許すつもりはないということの表われ。
「唐島さんは、それでいいんですか? そんな形で親御さんに決められた結婚で」
「もちろんです。私は、ずっと陽ちゃんのことを見て来ました。妹みたいにしか見てもらえていませんでしたけど、いつかは私を見てもらいたいと思っていた。陽ちゃんと結婚できるなら、こんなに嬉しいことはないです」
そっか……。この子は、木村のことが好きなんだ。
「生田さん、すごく綺麗な方ですね。私もこれまで綺麗な人ならたくさん見て来たけど、でもその中でもダントツ。悔しいくらいに、綺麗です。だから、陽ちゃんがあなたに心奪われて何も見えなくなるのも仕方ないのかもしれない。でも、一度離婚されているんですよね? 普通なら、あなたの方が遠慮しませんか? 陽ちゃんは誰がどう見ても文句なしの男性ですよ。自分より相応しい人がいるとは思いませんか?」
それに言葉を返せるはずがない。自分が一番分かっている。私が一番、木村に対して引け目を感じているのはそこだからだ。