ニセモノの白い椿【完結】


「顔だけで選ばれて結婚しても、惨めな生活が待っているだけだと思います。あなただけならそれも構わないかもしれませんが、陽ちゃんだって親族中に何を言われるか。ご存知だと思いますが、陽ちゃんのお父様はあなたのお勤めの銀行の頭取です。親族も皆、お堅い職業の方たちばかりで。どう考えても、二人が結婚してもいいことはないと思います」

いつか、こういうことを誰かに言われることも、全部覚悟していた。
覚悟していたつもりだったのに、けっこうくる。

年上の女として、バツイチの意地として、毅然とした態度でいたいと思うけれど、心の中にどうしようもなく痛みが広がって行く。

「生田さんの方が、陽ちゃんより年上なんですよね? だったら、あなたがもっと陽ちゃんのことを考えてあげるべきなんじゃないですか?」

そんなこと、あなたに言われなくても分かっている。
腹の中、ごったごたに煮えくり返る。

「言いたいことは、それだけですか?」

「……え?」

唐島さんが、ひっきりなしに動かしていた口をぽかんと開けて私を見ている。
残念ながら私は、涙をこらえて黙って引き下がる美しい性格をしていない。

「では、私も一言、言わせていただきます」

真っ直ぐに、目の前の可愛らしいお嬢さんを見据えた。

< 288 / 328 >

この作品をシェア

pagetop