ニセモノの白い椿【完結】
ふっと空を見上げれば、くっきりと巨大な満月が浮かんでいた。
大きな月がこちらに迫って来ているようで、一瞬ぎょっとする。
月が綺麗だ、なんて思えるような、心の綺麗な人間になりたかった。
ーーなんて感傷的になるのは、何日も一人で過ごしたからだろうか。
再び来た道を戻る。
あ、また――。
歩き出したと同時に、何かを感じる。
ただの思い過ごしかもしれない。ただ、感じるのだ。誰かの気配を。
ここ数日、こういうことが時折あった。
でも、確認するのが怖くて後ろを振り返ったことはない。
それに、何かを感じるだけで、近付いて来る気配はまったくなかったから、余計に気のせいのような気がしたのだ。
だったら、振り向いてみればいいのに、もし目が合ったりしたら――なんて思うと、出来なかった。
自然と足は早歩きになる。
そして、その人の気配は、気付くとなくなっていた。
ふっと息を吐く。
たまたま、近所の人が途中まで同じ経路なだけかもしれない。
夜の道を女一人で歩いているから、過敏になっているだけだ。
そう思うと、その考えに納得できる。
田舎の住宅街ではない。
他にも人通りはある。気にし過ぎているだけだと、そう思っていた。