ニセモノの白い椿【完結】
この時間が果てしなく長く感じられて、込み上げる恐怖にどうしようもなくなって。
鞄の中に入れっぱなしになっていた、小さい白いメモをひったくるように取り出していた。
初めて、その番号を目でたどる。
上手く機能しない指で必死にその番号をタップした。いつまでも続くかと思われた呼び出し音が途切れる。
(――もしもし)
「わ、私、生田です」
(生田さん? どうしたの?)
他人行儀な木村の声が、私が名乗ると、驚き交じりのそれでいていつもの私が知っている声に変わる。
無意識のうちに、スマホを壊れそうになるほどに強く握り締めていた。
息を飲んで、胸を押えて。
激しく叩きつける鼓動をなだめながら、口を開く。
「突然、ごめんなさい。でも、木村さんしか頼れる人がいなくて――」
(どうした?)
軽かった声が、すぐさま緊張に満ちた声になる。
「――助けて」
コンビニの窓の向こうの見知らぬ男の目が私をじっと見ている。
(今すぐ行くから、どこにいるのか教えて)
詳しく事情を聞くでもなく、迷いなく木村がそう言った。
きっぱりとしたその声が、震えることさえできない身体に沁み込んで行く。
この時木村がどこにいたのかは分からなかったが、本当にすぐに木村は現れた。