契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「杏南…」

仕事で抜けられなかった俊吾は深夜を過ぎて私の自宅に現れた。

「俊吾・・・」

「俊吾君・・・」

「お義父さん・・・」

「私はいいから…杏南の所についててやってくれ…」

「はい…」

父と俊吾は二言だけ話をしてリビングから出た。

母の遺体は病院からそのまま葬儀会場へと運ばれた。




「明日の六時から通夜でその翌日の十一時から告別式です」

「分かった…」

「お茶淹れようか?」

「頼む」

俊吾はソファに腰を下ろした。
畳の部屋に絨毯を敷いて、無理やり洋室にしたリビング。
私はキッチンに立って、ポットのお湯を茶葉の入った急須に淹れた。

「俊吾、私に内緒でお母さんに会ったのね…」

「あぁ」

「この葉書にかかれていた」

「えっ?」

私はバックに忍ばせた絵葉書を俊吾に見せた。

「澄子さん…」

「お母さん…俊吾にあの話したんだね…」

「まぁな…杏南には黙ってて悪かった。俺も詳しく事情が訊きたかったんだ…二人は相手の男性に会ったんだな…」

「うん…」

「酷いコト言われたらしいじゃないか…」

「うん…帰りがけ…お母さんと一緒に泣いちゃった…」

「…」

「私はダメな娘…具合の悪いお母さんに心労ばかりかけて…」

「杏南・・・」

「でも・・・最後は全部俊吾さんが…母の心労を取り除いてくれた…」

「俺が?」



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