契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
「こちらです」

私は黒崎さんに案内され、廊下を突き進む。「此処です」と黒崎さんが部屋のドアを開けた。入るとそこにはヘアメイクとスタイリストがスタンバイしていて、逃げた新婦が着るはずだったウエディングドレスとヴェールが吊るされていた。

「さぁ、時間がありません」

黒崎さんは私を彼女たちに任せ、部屋を足早に出てしまった。

「此処に座って下さい!!」

焦った声で促され、私は鏡の前の椅子に腰を下ろした。
よれよれのTシャツに洗いすぎて色の抜けたジーンズ姿の私。
この格好で俊吾さんの前に出たと思うと
気恥しく血流が顔に集まった。

慌てた様子でヘアメイクを施し、スタイリストが私にウエディングドレスを着せる。

露出の少ないレース素材の可憐なウエディングドレス。

私はひと目で気に入ってしまった。

まさか、花嫁の代役を引き受けるなんて…想像もしなかった。

あれよあれと瞬く間に本日の主役の花嫁にされてしまった。
代役とは言え花嫁姿の私。
入院中の母が見れば、涙を流して喜ぶかもしれない。
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