身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「ここじゃ邪魔になるから、とりあえず行こう」

「えっ?」


 晴斗さんは私の手を取り、「大丈夫?」と気遣いの言葉をかけてくれる。

 繋がれた大きな手に、ぎゅっと胸が締め付けられた。

 私のことを考え、晴斗さんは歩幅を小さくゆっくりと歩いていく。

 人の往来が比較的少ない道の隅にいくと、晴斗さんは手を離し改めて私に向き合った。


「ごめん、勝手に連れてきて。少し、話せないか」

「え……話すって」

「ずっと気になってた。あの日、いなくなってから。あの日は一日捜し回ったけど、見つけられなくて……」

「捜し回ったって」


 うそ……。


 そんな思いで晴斗さんをじっと見つめる。

 見上げる晴斗さんはどこかばつが悪そうに微笑を浮かべた。


「宿泊してるホテルを聞いてなかったけど、恩納村のホテル手当たり次第に回って、それから那覇空港に向かった」


 うそ……そんなことしてたなんて知らない。


「だけど、何時に帰るかも聞いてなかったから、時間が許す限り待ってたけど、結局会うこともできなくて」

「なんで、そんなこと……」


 すぐそばを行き交う人たちや、街の騒音の中、ふたりの間に一瞬の沈黙が落ちる。

 晴斗さんの手が、私の頭にそっと載った。

< 110 / 238 >

この作品をシェア

pagetop