身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 どこに向かうのだろう?

 そう思いながら窓の外に目を向ける。


「あの……お仕事中じゃ、なかったんですか?」


 たまたま駅前で会ったけれど、晴斗さんはスーツという姿。

 間違いなくプライベートな時間ではない。


「ああ、あの近くに開業する先生がいて、今日は内覧会に呼ばれてたんだ。ちょうどその帰りで」

「だから、スーツなんですね」

「そっか、向こうで会った時は完全プライベートな格好だったからか」


 晴斗さんは「仕事の時はスーツの率は高いよ」と言う。

 背が高くてスタイルがいいからスーツが様になっていて、今さっきばったり会った時は驚きと共にどきっとしてしまった。


「まぁ、もし仕事中だったとしても、何とかして時間作ったけどな」

「え……?」

「だって、またあとでなんて先延ばしにしたら、あの時みたいにもう会えなくなるかもしれないし」


 そんな言い方をされると、あの朝黙って帰ってしまった自分が晴斗さんを振り回してしまったのだと後悔が胸を覆う。


「ごめんなさい……」

 その気持ちがぽろりと口から出ていた。


「謝んなくていいよ。悪いのは全部俺だから」

「そんなことないです」

「あるよ。ちゃんと……ちゃんとしなかった俺が全部悪いから」


 どこか意味深な言い方をする晴斗さん。

 まっすぐフロントガラスの先を見つめる横顔をじっと見つめてしまい、ハッとして握りしめたままだったキーホルダーを手早くバッグに付け直した。

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