身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 気持ちいいくらいはっきりと私の気持ちを代弁してくれるお姉ちゃんの言葉に、つい涙が込み上げてきてしまう。

 でも、泣きそうなのがバレたくなくて、声が震えないように「でしょ!?」と強く返した。


『なんだよ、そんなことなら私が一緒に行っても良かったなー。沖縄、行きたかったなー』

「お姉ちゃんが行けそうならとっくに誘ってたし。仕事、そんな急に休めないでしょ」


 お姉ちゃんは、大きい病院の産科で助産師として働いている。

 日々、生命の誕生に立ち会うすごい仕事に携わっているのだ。


『まあね。でも行きたかったわー。去年行ってもう一年も経ってるし』


 そういえば去年の夏、沖縄の梅雨明け宣言後にお姉ちゃんは看護学生時代の友達と沖縄に行っていた。

 お土産に紅芋タルトをもらったのが懐かしい。


『まぁさ、行ったからには楽しみなよ。昨日の今日で綺麗さっぱり忘れるのは無理かもしれないけど、そんな男のことなんて気にしてたらせっかくの沖縄がもったいないからね!』

「うん……だね」

『ん、よろしい。一人旅なんてさ、なかなかできるもんでもないし、ね? どこ行こうかとか、ちゃんと考えたの? 三泊四日なんてあっという間なんだからね』

「わかってるよ。一応、色々考えてはきたけど、急にひとりだし、練り直したりもしてる」


 彼氏とふたりの旅行と思って考えていたプランは、没になったものも多数……。

 ひとりでも楽しめるものに変更せざる得ない。

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