身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「あー、聞かされたほうに罪はないから。責めてるのは言った人だけ」
返ってきた言葉は気軽な感じで、マスターにすら文句はつけつつ実は怒ってはいない様子。
内心「良かった……」と呟く。
「そうそう、お姉さんが謝ることじゃないから」
マスターがははっと笑うと、彼はまた小さく息をつき瓶の中身をグラスに注いだ。
「なぁ晴斗、彼女ひとり旅だって」
今度は私の情報をマスターが彼に漏らす。
相当仲が良いのか、マスターは彼を下の名前で〝晴斗〟と呼んだ。
それを聞いた晴斗さんの視線が、「へぇ……」という声と共にちらりと私に向けられる。
特に興味もないであろう私の事情を教えられてもリアクションに困るのは当たり前だ。
そんなタイミングで、カウンターの傍らに置かれた晴斗さんのスマートフォンが着信する。
画面を見ると「なんだ、どうした」と独り言を呟きスマートフォンを耳にあてた。
「はい、成海です……どうも、お久しぶりです。はい、ええ……いや、外勤というか、まだ沖縄に出向中で――」
通話に応じた晴斗さんはすぐにスツールを立ちあがり、足早に店の外へと出ていく。
内容から、どうやら仕事の電話のだようだ。
彼が席を外すと、知らぬまに高まっていた緊張から解放されていく。
成海、晴斗さんていうんだ……。