Pride one
「後ろ、車詰まってるからもう行って。あの車、青波荘に泊まってたお客さまなの」
 美波は車から一歩離れた。

「わかった。それじゃまた冬に」
 優月の言葉が終わると同時に、神長はアクセルを踏んだ。

 優月はシートに座り直し、新聞広告の裏紙で作られた手紙を開いた。昨日の出来事を美波なりに反省したのだろう。頭の中で謝罪文を期待していただけに、そこに書かれていた、たった一行のメッセージで、ぷちんと何かが切れた。

 窓をめいっぱい開けて顔を出し、優月は来た道を振り返った。

「てめえ、もぐらー!」
 喉が裂けるほど大声で怒鳴る。見送りではなく、優月の反応を待っていたのだろう、別れたそのままの場所から、美波が負けじと叫び返す。

「ゆずのばーか!」
「引き返す?」
 神長が訊いてきた。

「いい! 謝った俺が馬鹿だった。っつーかあいつ、よく考えたらさっきだって俺に謝ってねえじゃん。夜中きっとずっと気にしてたんだと思って、俺一人で……、ああ、やられた!」
 優月は手のひらをぐっと握り締めた。
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