Pride one
「手紙、何が書いてあったの?」
 後ろから坂巻の声がかかる。優月は握り締めたせいでさらにくしゃくしゃになったメモ紙を、そのまま坂巻に渡した。

「ええ?」
 坂巻が小さく驚きの声を上げると、神長が片手を後ろに出した。坂巻はメモをそのまま神長の手に握らせる。

「『据え膳食わぬは男の恥だぞ』って。美波さんなりの、精一杯の強がりじゃない」
 笑いながら、神長が優月の手にメモを戻した。

「もう、ほんと無理。しばらくはもぐらの顔みたくない」
 それをゴミ箱に投げ込んで、優月は力なく呟いた。



 左を向けば、すっきりと晴れ上がった空とエメラルドの海。背の高い椰子の木が左右等間隔に植えられた道。

海と山のある風景だが、故郷よりも外国に想いを馳せてしまう場所、沖縄。その西部海岸沿いを、優月はひとり、レンタカーで北上している。

 美波の飼い犬、ごん蔵の結婚式は、近年開発が進んでいる沖縄本島の北部のビーチリゾートエリアで執り行われるという。

「出向先に電話をかけてくるな」といえば、それを弱みと判断して攻勢をかけてくるという昔からの悪癖に負け、結局優月は沖縄に飛ぶ羽目になった。イエス、以外にそれを止める手段がなかったからだ。
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