救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~
「聖川さん、痛みはどうですか?」

手術衣からスクラブに着替えたあやめは、その上にドクターズコートを羽織っておりさらに医者らしく見えた。

「いえ、思ったほど痛くはないです。ありがとうございました」

あやめは手術をして得た所見と、行った処置、今後の治療と見通しについてわかりやすく説明してくれた。

「膿瘍は破れていましたが、幸いなことに腹膜炎はさほどひどくはなく、虫垂の切除と洗浄を行ってドレーンをおいた後にお腹を閉じました。背中の麻酔はもうしばらく入れておくので、痛いときにはご自分でこのボタンを押してくださいね。それでもおさまらない場合や違和感を感じた場合はナースコールでお知らせください」

そう言って、あやめは笑顔で硬膜外麻酔について説明してくれた。

虫垂炎はポピュラーな疾患で、単純に摘出するだけなら簡単な手術だと思われる。

「これからは血液検査を見ながらになりますが、抗生物質の使用で炎症もおさまって来ると思います。疑問質問がございましたら何でもお聞き下さいね。あっ、お父様には説明を済ませましたのでお帰りいただきました」

腹膜炎まで併発した場合は、敗血症になって死に至ることもあった。

あやめの迅速な対応があったからこそ、今こうして最小限の負担で光治は手術を終えることができたのだ。

感謝してもしきれない。

「何でも・・・ですか?」

「私のプライベートのこと以外なら」

光治のキラキラした視線に何かを感じ取ったのか、あやめが笑顔で牽制しているのがわかった。

「それはおいおい聞かせて下さい」

「機会がございましたら」

あやめは暗に、そんな機会はないと言いたいのだろうが、機会は作るものだ。

言質は取った。

「今後ともよろしくお願いいたします」

「退院後のフォローアップまではしっかりサポートさせて頂きますね」

こちらの思わせぶりな言葉にも全く乗ってくる様子はない。

光治の美しいと言われる容姿にも、付随する権力にも興味はないと言わんばかりに事務的な返しをする。

光治は益々、あやめに好感を抱いた。

退院後のフォローアップ・・・。

それはどこまでを意味するのか・・・。

光治は徐々にはっきりしてきた頭で、今後のことを考えていた。
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