切ないほど、愛おしい
「悪いけれど、ここで少し待っていて」

そう言われて私はソファーに腰を下ろした。

地下の駐車場からエレベーターでビルの最上階へ。
そこからは絨毯張りの廊下を進み、徹さんのオフィスにやって来た。
徹さんの言う通り休日のオフィスは静まりかえっていて、誰にも会うことはなかった。

「ここって、徹さんの部屋?」

広さは8畳ほどで、デスクとソファーとテーブルが置かれたスペース。
すべてが綺麗に片づけられていて、余計なものは何もない。

そう言えば、徹さんのマンションも綺麗だった。
男性の一人暮らしのくせに、私の家より綺麗だなって思った。

「ここは社長秘書室」
「へー.」

って事は、奥の扉の先が社長室。
なんだか私、凄いところに来てしまったみたい。

「いいの?部外者を入れて」
「見つからなきゃ、問題ない」
「そんなあ・・・」

後で叱られたって知らないから。

早速パソコンを広げ、仕事を始めた徹さん。
私はキョロキョロと辺りを見回した。
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