切ないほど、愛おしい
「陣って、モテるのよ。高校の時からすごく人気があったの」

へぇー。
意外だな。

「やんちゃな振りして仕事は真面目だし、意外に優しいし、それに一途だから」
「一途?」
なんだかピンと来なくて、聞き返した。

「そう、家族のために生きてるところがかっこいいの」

「え?」
持っていたカップを落としそうになった。

「本当よ。陣は自分のことよりもあなたとお母さんのことをいつも心配していたの」

「そんな・・・」
無意識に私の声が震えていた。

「私ね、これでも学生時代はずっといじめられていたの。正直辛かった。でも、徹と陣だけは普通に接してくれた。2人がいなかったら、私は今こうしていない」

「麗子さん」

これだけの美人なら、きっと目立ったことだろう。
いじめられたのも想像できる。
恵まれた人にもそれなりの苦労があるのね。

「私にとって陣と徹は特別なの」
はっきりと言い切った顔は凜としていて、カッコイイ。

それに、麗子さんにとって徹さんが特別な存在なら、徹さんにとってもそうなんじゃないだろうか。
さすがに親友の婚約者とどうこうってことはないだろうけれど、これだけ綺麗な人が近くにいれば、女性にもとめる基準だって高くなるはず。

「オイ、またボーッとしてる」
「ああ、ごめん」

「本当に大丈夫か?」
徹さんが、接近し顔を覗き込もうとする。

「大丈夫だから」

恥ずかしくて顔を赤くしてしまった私の横で、麗子さんが笑っていた。
< 71 / 242 >

この作品をシェア

pagetop