切ないほど、愛おしい
「やっぱり乃恵ちゃんは陣に似ているわね」

運ばれてきたコーヒーを飲みながら、麗子さんが私を見ている。

「散々話だけ聞かされていたからな。実物を見て感慨深いだろ?」

徹さんは普通に話しているけれど、私は首を傾げてしまった。

「あのね、私達は陣からあなたの話ばかり聞かされていたのよ。あの頃の陣は、家族のためにバイトを5つも掛け持ちして寝る間を惜しんで働いていたんだから」
「はあ」
その話は徹さんからも聞かされた。

昔から別々に暮らしていたからよくわからないけれど、想像はできる。
お兄ちゃんは働き者だもの。
だからこそ、私は医学部に行けたんだけど。

「そう言えば麗子、陣のこと好きだったよな」

え?

いきなりの徹さんの爆弾発言に、

「そうね」
肯定してしまう麗子さん。

嘘、ありえないし。

フフフ。
私の反応を見て不適に笑う麗子さんが、とってもキュート。

お兄ちゃんと同い年ってことは、31でしょ。
やっぱ美人って特だわー。
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