切ないほど、愛おしい
翌朝、私は早くに目が覚めた。

薬のお陰もあって、よく寝られた。
疲れも幾分とれた気もする。
でも、少し体が熱っぽい。
高熱ではなく微熱程度だけれど、怖くて熱を測ることが出来ないまま仕事に行く準備を始めた。

徹さんは、社長さんの迎えに駅まで行くから早めに家を出ると言っていた。
だから、出勤前に顔を合わせることはないだろう。

良かった。

昨日も散々『病院へ行け』って念を押されたから、熱が出たなんて言えば大騒ぎされるところだった。

さあ、仕事に行こう。

今日は日曜で緊急の出産でもない限り暇なはずだし、先輩達もいないから休み休み仕事が出来るはず。

なんとか今日を持ちこたえよう。
そうすれば、きっとなんとかなる。
体調が回復して、アパートさえ決めればすべてがうまくいくんだから。

こういう希望的観測は往々にして外れるとわかっていたはずなのに、私は信じてしまった。
この後、私は自分自身の読みの甘さを痛感することになる。
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