切ないほど、愛おしい
朝から微熱があるのは感じていた。
それでも朝食は食べられたし、息苦しさを感じることもなかった。
しかし、昼を過ぎた頃から明らかに体調が変わった。

とにかく体がだるい。
何とか踏ん張って仕事をこなしているけれど、できればどこかに腰を下ろしたい。

「ねえ、大丈夫?」
同い年で助産師の雪菜ちゃんが心配そうに声をかけてくれる。

雪菜ちゃんは、この病棟であまり歓迎されてはいない私の唯一の友達。
社会人としても2年先輩で、仕事も出来て明るいからドクターからの受けも良い。
可愛げがなくて先輩達にも好かれていない私は、これまで何度も雪菜ちゃんに助けてもらった。

「少し疲れが溜っているだけだから」
強がって答えてはみたけれど、
「嘘。今にも倒れそうだよ」

顔色が悪いのはいつものことだけれど、無意識のうちに壁にもたれようとしている私の行動から、体調の悪さを見抜いているようだ。

「ありがとう。でも、平気」
なんとか笑って答えた。

今倒れるわけにはいかない。
なんとか定時まで頑張らないと。
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