きみに ひとめぼれ

話を戻すと、あいつは「それでどうなったの?」という僕の質問に対する答えをまだ考えていた。

そしてぽつりと言った。


「付き合ってる人はいないけど……、付き合えないよな」


 それが、あいつの答えだった。


「あー、めちゃめちゃかわいかったなあ」


あいつは周りに誰もいないことをいいことに、かなりでかい声でそう言った。

それは後悔の言葉のはずなのに、あいつの顔はなんだかすがすがしかった。

その余裕な感じが悔しくて、僕はわかっているんだけど質問した。


「なんで付き合えないの?」


「俺となんて釣り合わないだろ」


__じゃあ……


 僕は次の言葉を選んだ。


「坂井さんとなら、釣り合うのかよ」


僕の言葉に、あいつは何も答えない。


「ちゃんと言えよ、付き合えないのは、坂井さんのことが好きだからって」



__ちゃんと言えよ。


「坂井さんのことが、好きだからだろ?」


僕はしっかりとした口調で聞きなおした。

自分の声が、心にずしんと響く。

その答えはわかっているけど、こうしてちゃんと答えを聞くのは嫌なんだ。


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