溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
『複雑骨折をしているわ。幸いなことに歩けるようにはなるけれど――』

『わたしが聞きたいのは、また同じように走れるのかどうかってことだよ? ちゃんとリハビリすれば走れるようになるんだよね?』

 そう尋ねたわたしの顔を見て、母が涙をこぼした。そして次の瞬間、まだ横になっているわたしを抱きしめたのだ。

『もう……以前のようには……』

『母さん! まったく可能性はゼロじゃないだろ』

 父が止めに入る。けれど母は、わたしに残酷な未来を突きつけた。

『お父さん、この子にごまかしは効かないわ。きっとすぐに真実に気がついてしまう。そうなる前に、わたしたち親の口から伝えないといけないのよ』

 母の言葉に父もそれ以上なにも言わなかった。

『嘘でしょ?』

『ねえ、お父さん。お母さんってばそんな真面目な顔して嘘つくなんて悪趣味だよね』

 父に助けを求めた。けれど、悲しそうな顔をして見つめるだけでわたしのほしい言葉はくれない。

 次第に母が言っていることが正しいのだとわかる。けれどわかったところでそれを簡単に受け入れるわけにはいかない。

『嘘……嘘だ。いやだよぉ……ねぇ、ねぇ……うっう、ああああああ』

 病室に絶望に打ちひしがれたわたしの泣き声が響き渡る。それに混じり両親のむせび泣く声が重なった。

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