溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 君島先生はあたたまった七輪の上に塩タンをのせてくれている。

「すみません、ご心配おかけして」

「え、まあたしかに心配はしてるけど、強引に誘う口実ができたからよかったなって思ってるよ」

 わたしが恐縮しすぎないように、気を使ってくれていることがわかる。

「ダメですね。みんなに迷惑かけちゃって」

 真鍋さんも帰る間際まで心配してくれていた。ふたりには関係ないプライベートな話なのに、迷惑をかけて申し訳なく思う。

「別に迷惑だなんて思ってない。ひとり焼肉はさみしいからつき合ってよ」

 君島先生はウィンクしながら、焼けたお肉をわたしの取り皿にのせてくれた。

「ほら、無理してでも食べて飲んで。そうしないと相手と話をする元気も出ないよ」

「ありがとうございます」

 たしかに君島先生の言う通りかもしれない。ずっとこのまま和也くんのことを避け続けるわけにはいかない。彼の話を聞かなければいけないのはわかっている。

「いただきます!」

 わたしは両手を合わせると、お肉を口に放り込んだ。

「そうそう、その調子。ここチヂミもうまいから食べよう」

 わたしもトングを持って、焼けたお肉を君島先生のお皿にのせる。

「ありがとう。そうそう、ゆっくりでいいからいつもの自分を取り戻してから中村先生に会うといいよ」

「はい。ちゃんと向き合ってみます」

「だったら、しっかり食べて戦闘能力上げていこう」

 君島先生の気遣いのおかげで、少し前向きな気持ちになれた。どんな結果になろうともちゃんと彼と向き合いたい。

 君島先生に勧められるまま、あれこれ食べてすっかりおなかがいっぱいになった。ひと息ついたところで、わたしのスマートフォンが鳴った。和也くんからだ。

「……っ」

 画面を見つめて固まってしまった。

「誰? 中村先生?」

「はい。後でかけ直します」

「あ、大丈夫。俺に貸して」

 そう言ったかと思うと君島先生の手が伸びてきて、さっとわたしの手からスマートフォンを抜き取った。
< 136 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop