溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 驚いて視線を彼に向けると、まっすぐにこちらを見ていた。

「ねえ、瑠璃ちゃん」

 真剣な表情のまま君島先生はわたしを見ている。

「中村先生なんかやめてさ、俺とつき合わない?」

「……え? ど、どうしてですか?」

 いきなりのことで驚いて、ちゃんとした反応ができない。

「どうしてって……、好きだから?」

 それはそうだろう、嫌いな人には〝つき合おう〟なんて言わない。

「いえあの、君島先生がわたしを好きってことで合ってますか?」

「ははは、やっぱり瑠璃ちゃんはおもしろいなぁ。好きだわ」

 君島先生はおかしそうに声を出して笑っている。

 理解が追いつかないわたしは、どう返事をしたらいいのかさえわからない。

「いえ、あの……だから、えーっと」

 あたふたして、君島先生をまともに見ることができない。視線を泳がせ、挙動不審なわたしを見て、君島先生はますます笑った。

「ごめん、別に答えがほしいわけじゃない。俺は自分の気持ちに嘘がつけないから黙っていられなかったんだ」

「いや、あの……その」

 人生で告白されたのなんて、はじめてのこと。少々変な行動をとっても許してほしい。

 けれどどうしたらいいのかわからないわたしは、ごまかすように手元にあったカンパリオレンジをぐっと呷るようにして飲んだ。

――そのとき。

「おい、あんまり調子に乗るな」

「ん?」
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