溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 何年も思い続けてきたのだ。そう簡単に諦められるわけはない。

 ふたつ返事をしたわたしを、和也くんはまたもや呆れた顔で見る。イケメンの冷たい顔は、結構怖いなんて言う人がいるけれど、和也くんに限ってはそういう顔もセクシーだから困る。

「いいか? これからは仕事をするんだ。節度を守らなかったり、使えないってわかった時点で速攻クビだからな」

「もちろん! 今までこの日のために一生懸命仕事してきたんだから!」

 立派な和也くんに恥じないように、看護師として認めてもらえるように自分なりに努力をしてきた。

「おい……」

 しかし和也くんは、こめかみを押さえて首を左右にふる。

「さっきも言ったけど俺のためとか重苦しいこと言うな。すべては患者さんのためだ」

「はい。和也くん……いたっ」

 元気よく返事をしたわたしのおでこが、彼の長い指ではじかれる。

「和也くんはやめろ。色々と誤解されたら困る」

 わたしはその誤解大歓迎なんだけど、それを言ってしまうともっと不機嫌になるだろうからやめておく。

「ん? じゃあなんて呼べばいい?」

「みんなと同じように、中村先生でいいんじゃないのか?」

「中村先生――」

 なんかいい。とてもいい。

 思わずにやけてしまったわたしを見た和也くんが、心底嫌そうな顔をしたけれどそんなこと気にしない。

「和也くん」

「だから――」

 文句を言いはじめた彼の言葉を遮る。

「わたし、和也くんと一緒に働けて本当にうれしい」

 何度も伝えた。それでもまだ伝え足りない。

 そんな嬉々としたわたしに、和也くんは「はぁ」とため息をついた。

「仕方なくだ! 絶対にそれを忘れるなよ」
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