溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 そう冷たく言い放つと、彼はすぐに近くの駐車場に止めてあった車に乗り込んだ。

 はあ、もうおしゃべりの時間は終わりか。

 それでも来週からは一緒に働くことができる。今はそれだけで十分だ。

 ちょっと残念だけれど仕方ない。そう思いながら踵を返して駅に向かおうとするわたしを、和也くんが呼び止めた。

「おい、なにやってるんだ。乗れよ」

 運転席のドアノブに手をかけて、こちらを見ている。

「いいのっ!?」

 うれしくて飛び上がりそう!

「早くしないと置いてくぞ」

 そう言ってさっさと運転席に乗り込んだ和也くん。わたしは、慌てて彼の真っ白い車の助手席に座った。

 はじめて乗る彼の車。なんだか妙にドキドキしてしまう。

 黒い革張りのシートは座り心地がよく、まだ買ってそう日が経っていないのか、新車独特の香りがした。
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