溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「絶対だよ!」

 しつこく念を押すわたしを車の助手席に押し込んだ和也くんは、運転席に回り乗り込んだ。そしてゆっくりと発車させた。

「とりあえず、妹さんに連絡入れて。かなり心配していたから」

 そうだった。バッグの中からスマートフォンを取り出す。電源を入れてメッセージアプリを立ち上げると、瑠衣からのメッセージや着信で画面がいっぱいになる。わたしは《和也くんと会えたから心配しないで》とメッセージを送ると、ものすごく怒った顔のクマのスタンプが送られてきた。これはきっと後日埋め合わせをしなくてはいけない。

 そっとアプリを閉じて、スマートフォンをバッグにしまった。

「後でちゃんと謝っておけよ。いきなり俺に電話がかかってきて、相当焦ってたぞ」

「うん。謝っておく」

「で、そこまでして俺に会いに来た理由はなんだ?」

 和也くんは前を向いたままわたしに尋ねた。

「それは……」

 聞きたくて今まで待っていた。それなのにいざとなると言いよどんでしまう。しかし聞かずに帰るという選択肢はない。

 ちょうど赤信号で車が停まったとき、わたしは意を決して彼に真相を問いただした。

「和也くん、お見合いするって本当なの?」

 死刑宣告を待つような気持ちで、返事を待った。それなのに返ってきた言葉は……。

「お前には関係のない話だ」

「関係……ないの?」

 はっきりと突き放すその態度に、わたしはふつふつと怒りが込み上げてきた。

「否定も肯定もせずに、関係ないってなに?」

 もっともひどい答え。振り回されているのはいつもわたしだけ。

「わたしの気持ち知っているよね? それなのに、関係ないなんてひどいっ!」

 車内にはわたしの声が響く。しかし興奮しているのはわたしだけで、和也くんはハンドルを握りいつもと同じように運転している。

「その質問に答える義務は、俺にない」

「そうかもしれないけど!」

 それでもわたしにもう少し真面目に向き合ってくれてもいいだろう。それさえもわがままだと言うのだろうか。
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