【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
ふたりが来てくれただけでも嬉しいのに、食欲なんか全然なかったのに、昴さんの言う通り口にいれたケーキは甘さと涙が混じって、少しだけしょっぱかったけれど、美味しかった。
心まで染みわたる優しい味がした。
「ここ1週間撮影中も真央の様子がずっとおかしかった」
「え?!」
撮影に支障をきたすような事はないって坂上さんが言っていた。
それだけは安心だった。私の事で真央の仕事に影響してしまう事が1番怖かったから。
「とはいっても、撮影は順調にクランクアップに向かってるから安心して?仕事に影響はないから。
でもそれはそれは真央のご機嫌が斜めでこっちもひやひやしたもんだよ。怒ったかと思ったら落ち込んで、メンタル大丈夫かよと言いたくなるほどだ」
「真央はもろに私情が仕事に絡んでくるタイプだからね。芸能人としては致命的ね」
ふたりの言葉に頭を抱える。
「やっぱり私のせいだ…」
再び肩を落とすと、岬さんは大きなため息を吐く。
「坂上さんから聞いたけど、事務所の差し金つったって全部花乃さんの戦略でしょう?
大体趣味が悪すぎよ、わざわざ探偵紛いの人間を雇って一般人であるあんたのプライベートを探るなんて」
「それは俺も思うけど、最近よくドラマ現場でも花乃さんが来てるから気になって」
「そうなんですか?!」
顔を上げて、思わず大声が出てしまう。こうやって会えない間に真央と花乃さんの距離がぐっと縮まって、それは想像するだけで不安で堪らない。
隣でフンッと鼻を鳴らして、足を組んだ岬さんが口を開く。