【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

何となく話に入れずに、無言でご飯を食べる。するとパートのおばさんが私へ話を掛ける。

「棚橋さんはどっち派?冬にやっていたドラマ見たでしょうー?」

「あ、見ましたけど。う~ん、どっち派かはないですかねぇ」

なんて。

あのドラマの真央めっちゃかっこよかったですよね?!話に入って行きたい気持ちはいっぱいだったけれど、ぐっと我慢をする。

思わず顔がヘラっとしてしまうけど。お母さん世代でも好きだという人が多い。勿論パート先のおばちゃん連中にも大人気な訳である。

「そういえば、今日のワイドショー見た?」
「え?何何?」
「姫岡真央が事務所を通して婚約発表したらしいわよー」
「えー?でもあの子まだ若いわよねぇ」
「若いけれど、そういう報告を濁さずにきちんとしてて好印象だったけれど、あ。お昼のワイドショーでもやるんじゃない?」

休憩室に備え付けられている大型のテレビは、丁度お昼のワイドショーが流れていた。

今日のトップニュースに、真央の顔がドアップで映る。おおお…何という美しいお顔でしょうか…!黒髪にしてますますセクシーさが増したのよねぇ。自分の彼氏ながら惚れ惚れとしてしまう。

「俳優の姫岡真央さんが婚約発表をしました――」

張り付けられたような笑顔で、声高らかにアナウンサーが読み上げる。
そうなのだ。

真央はけじめだと言っていた。まさかこんな形で発表してくれるとは思わなかった。

事務所の方から、私との婚約を発表してくれたのだ。結婚するのもまだだというのに気の早い話ではあるが、その話を聞いた時の1番の反応は「本当にいいの?」だった。
< 222 / 229 >

この作品をシェア

pagetop